産後の便秘は出産時の『いきみ』が原因?解消法まとめ |
産後、便秘になるケースは珍しくありません。 分娩時にいきみすぎたため肛門括約筋が傷ついたり、 帝王切開などの傷口をかばっていきめないことが便秘のキッカケになることも。
ここでは、産後に便秘になる『原因』と『対処法(食事療法・生活改善)』『安全性の高い便秘薬』について解説します。
アサミ『赤ちゃんが生まれて、腸が圧迫されなくなったら、便秘は治るものだと思っていましたが、まだ便秘症状が続いていますが、どうしてでしょうか?』
出産後の症状として便秘になることは珍しいことではありません。 『育児による疲れ』や『産後の傷をかばって、いきめない』ことも原因です。 それでは、出産後に便秘になる原因を解説しましょう。
生活リズムや体の変化が原因
出産後は、育児により赤ちゃんが中心の生活リズムが変わります。 また、出産による体の変化も大きく、疲労や運動不足をキッカケに排便が困難になることおあります。 ここでは、出産後に起こる便秘の原因4つを解説します。
出産時に会陰切開や帝王切開をした場合、傷をかばって強くいきめないことが原因で便秘になることも。
また、分娩の際強くいきんだことで、肛門周辺に負担がかかり痔になることも珍しくありません。痔で痛む箇所をかばうことで、強くいきめないことも便秘の原因と考えられます。
赤ちゃんが生まれると育児で生活リズムが乱れ、睡眠不足になりがちに。 疲労やストレスが溜まると、自律神経が乱れ腸が正常に機能しなくなってしまい、便秘になってしまいます。
特に、睡眠時間は副交感神経が活発になり、ぜんどう運動(腸が便を押し出す動き)を促進するため、腸にとって重要な睡眠時間を削られると、腸が本来の役割を果たせません。
産後の育児は、赤ちゃんから目を離せないため、つい家にこもりがちになります。 忙しく子育てをする一方で、行動範囲が狭まり、気がつけば運動不足に。 妊娠中は運動不足になりやすく、出産後も運動量が増えないとますます筋肉が衰えてしまいます。
運動で体を動かすと腸に刺激が加わり、腸の働きを促進します。 悪露が終わる産後1ヶ月あたりから軽いストレッチやウォーキングを行うと便秘解消に効果的です。
母乳は、お母さんの摂取した水分から作られますが、一般的に1日に700ml前後の母乳が作られるとされています。
体内の水分が足りないと、大腸で水分吸収された便が硬くなり、排便が困難になります。 授乳期は、妊娠前より(1日あたり)1リットルほど多く水分を摂取するのが理想的です。
出産後は、便秘になりやすい時期ですが、放っておくと『痔』の原因にもなるって知っていますか?
アサミ『え〜!知りませんでした…。痔ってひどくなると、手術を受ける方もいますよね…。』
そうですね。痔は身近な疾患ですが、痔瘻になると治療は手術に及びます。 便秘症状のある場合は、便やいきみで直腸や肛門を傷つけないよう注意が必要です。
分娩時のいきみや便秘が痔の原因に
分娩時のいきみが原因で痔になる方は珍しくありません。 そもそも、出産後はの強いいきみで、肛門周辺を圧迫していたり、肛門括約筋が傷ついている可能性があり、痔になりやすい状態です。
その上、便秘症状が長く続くいてしまうと、痔の症状を併発する可能性がさらに高まります。
便が硬かったり、便意がないのに無理にいきんだりすると、肛門周辺の血管に負担をかけてしまいます。 肛門周辺に負荷がかかると、皮膚が切れて裂肛(切れ痔)になったり、うっ血で痔核ができたりします。
肛門の傷口から細菌が侵入すると、炎症を起こすキッカケになるため注意が必要です。
アサミ『授乳中なので症状のひどくない時は食生活から便秘を治したいんですが、オススメの食べ物はありますか?』
便通をよくするためには食物繊維の多い食べ物や、フルーツを摂ると効果的です。便秘改善にオススメの食品をまとめてみましたので、日々の食事の参考にしてみてください!
2種類の食物繊維を摂る
水溶性食物繊維は、水に溶ける性質をもち、腸の中でゲル状の柔らかい便となって、排便を促します。
・レモン
・さつまいも
・里芋
・オーツ麦
・大麦
・昆布
・わかめ
不溶性食物繊維は水に溶けず、スポンジのように水分を吸収して、便のボリュームを増やして、腸を刺激してぜんどう運動(便を排出する動き)を促進します。
・キクラゲ
・こんにゃく
・大豆
・キノコ類
・かんぴょう
・抹茶
・穀類
・海藻類
オリゴ糖・善玉菌
オリゴ糖は糖類のなかま。腸内で善玉菌の増加をサポートし、腸内環境を整えます。
・ごぼう・玉ねぎ・エシャロット・バナナ・きな粉・納豆・はちみつ
善玉菌が減少し、悪玉菌が増加すると、腸内環境が悪くなり、腸が正常に機能せず便秘に陥ります。そのため、善玉菌を含む食べ物を摂ることが、腸内環境を整えるために効果的とされています。
・ビフィズス菌が添加されたヨーグルトや乳酸菌飲料など
*すべてのヨーグルトや乳酸菌飲料にビフィズス菌が含まれているとは限らず、ビフィズス菌が添加された食品を選ぶ必要があります。
発酵食品・乳酸菌
発酵食品は、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整え、便通をよくします。
食品:納豆・キムチ・ピクルス・ヨーグルト・チーズ・ぬか漬け
調味料:醤油・味噌・塩麹・酢・みりん
食生活のほかに、生活習慣からも便秘を改善できるって知っていますか?
アサミ『生活から改善ですか…?便秘は腸の問題なので、体の内側から治すイメージしかありませんが…。』
実は、日々の運動量や睡眠時間も、便秘と大きく関係しているんですよ。 それでは、生活から改善できる4つのポイントを解説していきますね。
出産後は、育児が忙しい一方で、赤ちゃんから目が離せず行動範囲が狭くなりがちで、気づけば運動不足に。
体を動かすことで、血流改善や腸を刺激し、腸の機能を改善します。 産後1ヶ月ほど経過し、体調が回復したら軽いストレッチやウォーキングで運動不足を解消しましょう
体の水分が足りないと、便が硬くなり便秘だけでなく痔の原因にも繋がります。
授乳中は、母乳を作るため水分不足になりがちなため、食事で味噌汁やスープを取り入れたり、お茶や水をこまめに飲むと良いでしょう。
安静時や睡眠時は、腸の働きをつかさどる副交感神経が活発になりますが、育児で睡眠不足になると、自律神経のが乱れて腸が正常に機能しにくくなります。
1日7時間程度の睡眠をとって、便秘解消を目指しましょう。
腸の機能をよくするためには、1日3食の規則正しい食生活が理想です。 腸の動きが活発な朝に食事をとって、腸のぜんどう運動を促しましょう。
アサミ『便秘がひどい時は、お薬を頼ってスッキリさせたい気持ちもありますが、授乳中だと赤ちゃんに影響がないか心配です…。』
出産後の症状として便秘になることは珍しいことではありません。 『母乳はお母さんの食べたものに影響しますから、授乳中の医薬品選びには注意が必要です。
便秘薬の中には、授乳中に飲んではいけないものもあるため、赤ちゃんのためにも安全性の高い便秘薬を使用しましょう。
授乳中に服用NGの便秘薬
市販の便秘薬の中には、薬に含まれる成分が赤ちゃんへ影響するため、授乳中に服用してはいけない製品もあります。 便秘を治すため服用した場合は、授乳を控えるようにしましょう。
働き
大正製薬のコーラックハーブにに含まれている『センノシド(センナという薬用植物由来)』という成分は、腸のぜんどう運動を正常に改善する作用があります。
『甘草エキス末』は便秘薬で腸が収縮したことで起きるお腹の痛みを和らげています。
安全性
母乳を飲んだ赤ちゃんの体内にセンノシドが入ると、下痢を起こす可能性があります。授乳中は、服用を避けるようお薦めします。
成分
センノシド、甘草エキス末
添加物
セルロース、クロスカルメロースNa、ステアリン酸Mg、タルク
働き
スルーラックSに含まれている『ビサコジル』は、大腸の粘膜に作用して、鈍った腸を活発にし、排便を促します。
『センノサイドカルシウム』は腸内細菌により活性化され、スムーズな便を排出を促進します。
安全性
センノサイドカルシウムは生薬のセンナ由来。赤ちゃんが、母乳から成分を摂取すると下痢になる恐れがあります。授乳中は、服用を控えましょう。
成分
ビサコジル、センノサイドカルシウム
働き
『大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)』には、生薬の大黄と甘草が配合されています。
『大黄』はアントラキノン系の大腸を刺激する成分を含んでおり、『甘草』には腹痛
や排便の痛みを和らげる働きがあります。
安全性
大黄は、赤ちゃんが母乳から摂取してしまうことで、下痢になる可能性があります。
授乳中の服用は、避けましょう。
成分
大黄甘草湯エキス散(大黄、甘草より抽出)
添加物
無水ケイ酸、セルロース、カルメロースCa、ステアリン酸Mg
比較的安全性の高い便秘薬
働き
マグミットに配合される『酸化マグネシウム』は結腸・直腸などにピンポイントで作用し、腸のぜんどう運動を促進します。
さらに、結腸での水分吸収を抑制し排便を促します。
安全性
主成分の酸化マグネシウムは、結腸や直腸で選択的に作用するため、マグネシウムの血中濃度が少なく、母乳への影響もほとんどありません。
成分
酸化マグネシウム
*各便秘薬を使用の際は、自己判断で服用せず、医師・薬剤師に相談しましょう。