ダウン症は染色体異常が原因? 妊婦が知っておくべき5つのこと。 |
ダウン症は新生児に最も多い遺伝子疾患とされているため、出産を控えたお母さんや妊活中の方は、おそらく知っておきたいことが多いはずだと思います。
今回は、ダウン症が発症する原因や、疾患としての症状や特徴、また妊娠中の検査方法にも触れてお話をしたいと思います。
ダウン症は染色体が本来の配列と違った組み合わせになることが原因ですが、遺伝だけでなく偶発的に発症するため、健康な夫婦の赤ちゃんにも起こる可能性がある疾患なのです。
21トミソリーとは?染色体異常の原因と仕組み
私たち人間の体はたくさんの細胞によってできていますが、これは、はじめは1つの細胞だった受精卵が分裂を繰り返して約60兆個にまで増殖することで形成されるのです。
この細胞1つ1つに核があり、遺伝情報を持つ染色体が小さく折りたたまれて存在しています。
通常、染色体は23 対46本(1対2本が23セット)の組み合わせなのですが、21番目の染色体が1本多く1対3本になることが原因でダウン症が発症します。
ダウン症は大きく分けて『標準トミソリー型』、『転座型』、『モザイク型』の3種類に分けられます。では、それぞれの仕組みを詳しくお話していきます。
標準トミソリー型は、ダウン症の中でも90〜95%とほとんどの割合を占めています。 通常22本の常染色体が1本多い23本になることが原因とされていますが、お父さんやお母さんが正常な染色体を持っていても、偶発的に起こることがあります。
転座型は、ダウン症の中で5〜6%の割合で確認されています。 21番目の染色体の1本が、他の染色体に付着することが原因です。 また、その半分は転座染色体を持つ親に由来し、残りの半分は正常な染色体を持った両親の染色体不分離が起因となっています。
ダウン症の中では1〜3%と一番稀なケースがモザイク型です。 モザイク型は、1人の中で21番目の染色体が正常に2本の染色体を持つ細胞と、3本の染色体を持つ細胞が混ざっている状態です。
これは、受精卵が分裂する際にどこかのタイミングで1つの染色体に異常が発生し、その後正常な細胞と異常な染色体を持った細胞がそれぞれ分割していくことが原因です。
ダウン症には、妊娠期間中にできる検査がいくつかありますが、費用や期間・検査の確率も大きく違います。ここでは、それぞれ5つの検査をご紹介します。
出生前診断を受ける目的を明確に
そもそも、妊娠期間中に出生前診断を受ける目的は何なのでしょうか? 胎児にどんなリスクがあると分かった時、どのような対応を選ぶかは妊娠中お母さんをはじめ、赤ちゃんのお父さん・その他家族など、あなたの周りの環境や交際関係によってそれぞれ異なります。
万が一、深刻な状況が解り、出産を諦めなければなくてはいけないと判断した時、妊娠が進むにつれ人工妊娠中絶による母体への負担・リスクも高まります。 また、母体保護法という法律で、中絶手術が認められている期間は妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)と定められていることも、知っておくべきでしょう。
赤ちゃんはもちろん、その家族になるお母さんやお父さんにとって、どのような判断が責任あるものなのでしょうか。 母体の健康状況や経済上の理由など、妊娠継続が困難になる原因はその人によって違いますし、倫理的な問題大きく、真剣に判断しなければなりません。
その判断を怠らないためにも、妊活中から出生前診断など出産に関する期間や費用などを知っておくことも妊活ママの努めです。 妊娠が解ってから慌てることが無いよう、妊活中から出産までの知識を心得ておきましょう。
それでは、出生前診断の具体的な内容に進みたいと思います。
出生前診断の比較
検査方法 | 検査の時期 | 費用 |
---|---|---|
新型出生前診断(NIPT) | 妊娠10〜18週 | 約200,000円 |
母体血清マーカーテスト | 妊娠15〜21週 | 10,000円〜20,000円程度 |
NT超音波検査 | 妊娠11〜13週 | 20,000円〜50,000円程度 |
羊水検査 | 妊娠15〜18週 | 120,000円〜150,000円程度 |
絨毛検査 | 妊娠9〜11週 | 約150,000円 |
時期:妊娠10〜18週 / 費用:約200,000円
NIPTは、妊娠中の母親から血液を採取し染色体異常がないか高精度で診断ができます。
また、従来の羊水検査や絨毛検査のように検査により流産のリスクを高める心配もないというメリットがあります。
陽性の場合は、確定診断のため羊水検査を受けることになりますので、検査結果を待つ期間も2週間程度みて妊娠16週目あたりには受けておきましょう。
時期:妊娠15〜21週 / 費用:10,000円〜20,000円程度
母体血清マーカーテストは、妊娠中の母親から血液採取をし、血液中の成分や濃度を調べることで胎児の染色体異常(1トミソリー、18トミソリー、神経管閉鎖障害など)がないかを調べる検査です。
また、『トリプルマーカー』と『クアトロマーカー』の2種の検査方法がありますが、検査項目の多い『クアトロマーカー』の方が検出率が高くなります。
他の検査に比べて、安価なため費用的に負担は少ないのですが、胎児の染色体異常の有無を決定づけるわけではなく、発症率を推定するための検査のため、その後の羊水検査や絨毛検査が必要です。そのため、妊娠17週までに受けることをお勧めします。
時期:妊娠11〜13週 / 費用:20,000円〜50,000円程度
NT超音波検査は、超音波診断装置(エコー)を使って胎児の発育や、奇形・異常がないか(頸部の浮腫み、鼻骨が形成など)を検査します。
検査方法は2通りあり、超音波を発する先の丸い器具を膣の中に入れる『経腟法』と、妊婦のお腹の上から器具を当てる『経腹法』があります。
時期:妊娠15〜18週 / 費用:120,000円〜150,000円程度
羊水検査は、妊婦の腹部に針を刺して羊水を採取し、羊水に含まれる胎児の細胞から染色体異常(ダウン症、エドワーズ症候群、パトー症候群)などがないか診断します。
ダウン症のわかる確率の高い羊水検査ですが、ごく稀に感染症や流産の原因になることも踏まえておきましょう。安全のため、採取前にはエコーなどで赤ちゃんの場所を確認しますが、こうしたリスクが伴うことも理解した上で検診に臨みましょう。
時期:妊娠9〜11週 / 費用:約150,000円
絨毛検査は、子宮頸部にカテーテルを挿入するか、妊婦さんのお腹に針を挿入して、絨毛を採取します。さらに採取した細胞を培養し、染色体異常(数的異常、転座、欠損)がないか調べる検査です。
検査が早期に行えることがメリットですが、出血や感染症・流産などのリスクも伴いますので、担当のお医者さんと相談しながら、体調を整えて検診を検討しましょう。
さて、実際ダウン症の方にはどのような特徴があるのでしょうか。
ダウン症の症状には個人差がある
ダウン症のある子供たちは、一般的にゆっくり発達することが多く、言語的な能力より、視覚的なコミュニケーションが得意な傾向があることも多いと解ってきています。
また、ダウン症の中でも症状軽い『軽度』の方や、重い知的障害や合併症をもつ『重度』の方など、その症状は大きく異なります。
そのため、紹介する症状は必ず全てあらわれるというわけではなく、大きく個人差があることも踏まえておいてください。
ダウン症は、知的指数IQや日常生活での能力などを参考に障害の等級を判定されています。 これは、療育手帳の交付のために定められた基準ですが、都道府県の独自の基準も一部あり、重度と中軽度の境界は、多くの自治体で国の基準IQ35が目安とされています。
知的障害の等級と症状
等級 | 知的指数(IQ) | 生活における自立の度合い |
---|---|---|
最重度 | IQ20未満 | 生活全般に常時援助が必要 |
重度 | IQ35未満 | 日常生活に常時援助が必要 |
中度 | IQ50未満 | 日常生活に援助が必要 |
軽度 | IQ70未満 | 日常生活はできる |
また、健常者の知能指数は85〜100程度とされていますが、 知能指数が50〜70の軽度知的障害が大半を占め、知的障害の全体に対して約8割と言われています。
また、特に症状の軽い方の場合、日常生活にそれほど支障がないために、自分でも知的障害であることに気づかず教育課程を終えられる場合もあると言われています。
ダウン症の症状は、身体的な特徴にも結びついています。 丸くて起伏の少ない顔や、つり上がった目、顎が小さい、幅が広く低い鼻、指が短い、内眼角贅皮などが挙げられ、特有の顔立ちになることが分かっています。
また、顔の中心部の成長が、顔の外側に比べ遅いことで、つり上がった小さい目になると言われています。
重度のダウン症の場合、いくつかの合併症を患うこともあります。 ここに挙げた内容はその一部ですが、併発した疾患にはそれぞれ治療が必要になる場合があることを覚えておきましょう。
合併症
鎖肛、先天性心疾患、先天性食道閉鎖症、白血病、円錐角膜、斜視、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症など。
ダウン症患者の職業や自立に向けてはどのような可能性があるのでしょうか? 公的な保障制度や実際の就業率をまとめてみました。
ダウン症患者の自立への試み
ダウン症患者の社会的な自立は、その親や家族だけでなく国(行政)の課題でもあります。 特に症状の重い場合は、家族の支えだけでなく、安定した福祉制度が必須でしょう。
また、福祉制度を利用して様々な環境や社会に触れ合うことも、自立を促すプロセスの1つです。
近年では、障害者雇用促進法などの雇用対策などにより、2016年には厚生労働省から『ハローワークを通じた障害者の就業件数が7年連続で増加した』という報告もされています。
一方、症状の重いために、就業が困難な場合もあるでしょう。 また、ダウン症にの症状により、どの程度公的支援が受けられるのか、どの程度の自立が可能なのかは判断が難しいものです。
各都道府県にある障害者更生相談所で相談をしたり指導受けることもできるようになっているので、1人で悩まず専門の障害者福祉士を頼って見るのも1つだと思います。
療育手帳
療育手帳とは、知的障害者に発行される障害者手帳のことです。障害を持った方が一貫した指導や相談などが行われ、様々な援助措置が受けやすくなります。
重度心身障がい者医療助成
重度心身障がい者医療助成は、重度障害者が診療を受けた時に自己負担雨を助成する制度です。
お住いの地域によっても制度が違いますが、重度障害者の場合は医療手当がある場合もありますし、手当として毎月数万円を給付している自治体もあります。
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当は、精神や身体に障害を持った児童に手当がされます。20歳未満の障害者が対象となっており、養育をしているお母さんやお父さんに支給されます。
支給月額は、厚生労働省により1級で51,000円・2級で34,300円と決められています。
デイサービス(地域活動支援センター
地域活動支援センターとは、障害によって働くことが難しい方の日中の活動を支援する福祉施設です。
I型・II型・III型と目的別に3つに分けられ、活動内容も変わってきますが、創作的活動や生産的活動の機会提供・社会社会との交流・入浴や食事の提供・機能訓練などが行われます。
ホームヘルパー
日常生活に支障のある重度の障害者の場合は、家事や入浴介助の援助を受けることが出来ます。
対象者は、自立支援給付の給付決定を受けた方に限られますが、保護者が介助と家事の両立が難しい際も支援を受けられます。
ショートステイ
ショートステイは、保護者が様々な事情で家を留守にしなければいけない場合、施設に短期間預けることができるサービスです
対象は、ショートステイの自立給付費の支給決定を受けた方に限られます。
さて、ダウン症の原因や特徴などをお話してきましたが、発症の予防法はあるのでしょうか?
ダウン症予防は、診断と葉酸がポイント
ダウン症予防は100%防げ無いからこそ、検査と予防が大切なのです。 胎児の状況を診断することで、出生前に赤ちゃんの健康リスクを調べたり、葉酸の摂取で母体の健康管理に気をつけましょう。
妊娠のわかったママは、まず出生前診断のタイミングやそれぞれの検査の精度(診断の確率)などを深く理解しましょう。
深刻な状況がわかった時、その対応が遅れると母体へのリスクも高まりますし、大きな障害リスクを持った胎児とわかった時、判断をし家族や赤ちゃんと向き合う時間が必要です。
厚生労働省により服用を推奨されている葉酸ですが、海外で行われた研究では『葉酸を十分に摂取しているとダウン症のリスクが70%軽減される』という報告もされています
あくまで、100%の予防ではありませんが、造血促進や子宮内膜の強化によって神経管閉鎖障害などの先天性疾患の予防にも期待がされているため、特に妊活中〜妊娠中の方には服用をお勧めしています。