葉酸サプリって本当に効果あるの? |
厚生労働省が妊娠中の女性に葉酸の摂取を推奨するようになったのはつい最近のことですが、なぜその呼びかけが盛んになったのでしょうか。
その理由は以下3つです。 ここでは、その効果を実証する”報告”と”体の仕組み”についてお話します。
女性の妊娠率は加齢とともに低下すると言われ、35歳を超えると流産のリスクも高まるため、より妊娠しやすい体づくりが大切になってきます。
高齢出産のリスクを葉酸で予防
妊娠率は年代により大きく異なり、20代後半で41/9%であるのに対し、40代前半になると16.5%になるという調査結果もあります。 また、35歳を超えると流産のリスクも高まるため、母体にも赤ちゃんにもストレスのかからない生活と体づくりが求められます。
つまり、なるべく若い年齢での妊娠が様々なリスクの解消となりますが、”もともと妊娠しにくい体質の方”や”生理不順気味の方”、”結婚した年齢が遅かった方”など、妊娠に至らない理由はそれぞれ違います。
精子と卵子が受精しても子宮内膜に定着しなければ“着床”には至りません。 葉酸は、”着床”や”正常な受精卵の成長”を促進し、妊娠に結びつきやすくなると言われています。
また、着床後に正常に成長しなければ流産や障害を持った赤ちゃんの発症率も高まりますが、受精卵の成長を促進する働きから、葉酸は”元気な赤ちゃんを産む”のための欠かせない栄養素となっています。
葉酸は、“子宮内膜の強化”と“血流促進”によって着床が促され、着床後の正常な成長へ効果をもたらします。
葉酸は細胞分裂や増殖に働きかけ、丈夫で厚い子宮内膜づくりを助けます。 丈夫で厚い子宮内膜は、受精卵の着床を促進し、受精卵を正常に定着させます。 また、“着床率”と“子宮内膜の定着率”の増進から妊娠に至りやすくなります。
葉酸はビタミン12とともに赤血球の生成を促す効果があります。 受精卵は血液で運ばれる酸素や栄養素をもとに成長するため、血流の促進により、着床後の受精卵の成長促進に寄与します。 また、正常な受精卵の成長に働きかけることで、流産や障害を持った赤ちゃんの出生率を低減すると言えます。
『神経管閉鎖障害』は妊娠初期に発生される疾患です。ここでは、そのリスクと予防方法についてお話しします。
神経管閉鎖障害になるカラダの仕組みとその予防
神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄の元である“神経管”と呼ばれる管状の細胞の一部が塞がり、脳や脊髄が正常に成長できなくなる先天性異常です。神経管の塞がる部分によって障害の状態は異なりますが、主には“無脳症”と“二分脊髄症”の2つが挙げられます。なお、厚生労働省が過去に発表した過去の資料によると、その発症率は2000人に1人とされています。
脳に疾患が見られる際は、“無脳症”と呼ばれ、胎児の脳の形成がされない状態や、脳の一部が欠損するケースもあり、死産に至る可能性が高いとされています。
神経管の下部が塞がれると、脊髄や脊柱が正常に成長できなくなり一部が分断されます。脳からの指令が脊髄を通らなくなるため、体の下部へ神経伝達ができなくなります。下半身の神経麻痺から運動障害・歩行障害の発症や、膀胱や直腸の麻痺から性機能障害や排便・排尿障害の発症率も高まります。 また、妊娠中は神経管の塞がった場所を検知することは難しく、出産されるまでどのような障害が現れるか判別はできません。
神経管閉鎖障害の原因は、”遺伝”や”妊娠中の環境”、”ビタミンAの過剰摂取”など様々ですが、”葉酸の摂取不足”もその1つです。 脳や心臓・神経など様々な器官の元となる神経管は妊娠初期に発達し、細胞分裂時のDNAの合成を促す葉酸は必須とされています。 また、アルコール摂取により葉酸の吸収代謝が低下し、細胞の成長が停滞することで神経管閉鎖障害の発生リスクが高まってしまいます。 私は妊活時から充分葉酸を摂取し予防に努めることをお勧めしています。もちろん、葉酸サプリで100%予防できるわけではありませんが、生まれてくる赤ちゃんのために少しでも発症リスクを軽減したい気持ちは妊娠中ママの共通の想いでしょう。
ダウン症の発症率は、およそ1000人に1人と言われていますが、20歳では『1/1667』なのに対して35歳では『1/385』と高齢出産になるほどその確率は高くなります。
原因は染色体異常
ダウン症の原因は染色体異常によるものです。 人間の体は多くの細胞からできており、その細胞には核がありますが、この核の中にあるDNAがヒトの遺伝情報の継承と発現を担っています。 染色体はヒストンと呼ばれるタンパク質にDNAが巻きついた棒状の塊として存在します。 私たち人間の染色体は2本ずつの結合し形成されており、全部で46本。ダウン症はこのうち21番目の染色体が1本余分に存在し、合計3本(トミソリー症)になることで発症する先天性疾患です。妊婦の血液から胎児の病気の有無を簡単に調べることのできる”新型出生前診断”(NIPT) 2013年4月に導入されました。 検査で異常が分かり妊娠を続けるか選択できた人のうち9割が中絶を選んだことは、ニュースなどでも大きく取り上げられていましたね。 従来の羊水検査より早い妊娠10週程度から行うことができ、検査が原因となる流産の危険性もないことから注目をされ利用者が拡大した一方、検査によって胎児の生存権を脅かされることを理由に、倫理観をめぐって大きな問題にもなりました。
ダウン症・予防に効果的な栄養素として、葉酸が挙げられることが多くありますが、実際はどうなのでしょうか。葉酸にはDNAなどを合成し、神経管閉鎖障害などのリスクを下げる効果があることから、ダウン症予防にも効果を期待する人もいるようです。 しかし、残念ながら今のところダウン症予防への相関関係は認められていないため、発症の原因とされる染色体異常を軽減することで、『結果的にダウン症発症のリスクを下げているのではないか』という見解に留まっています。 また、染色体異常は女性だけでなく男性にも原因がある可能性あるため、妊活中からご夫婦で葉酸サプリを服用するのも良い心がけでしょう。